「母よ恋し」の評判の大きさ

2014/11/24

映画「母よ恋し」の評判を知る手立てとして、「蒲田週報」と「キネマ旬報」の2誌が格好ではあるが、今のところ、これに関する記事は手元にない。従って、第三者の具体的な評価はわかっていないのが現状である。

しかし先に紹介したように、水島自身の書き込みによると、この映画は「大あたり」したと記されている。さらに城戸からは、「お涙頂戴もの」路線をどんどん書くようにと指示されたことを考えあわせれば、かなりの評判を得たことは確かである。

それを裏付けるものが、じつは前出の雑誌の切り抜き自体にある。旧六日町役場に保管されていた遺品に、雑誌「芝居とキネマ」大正15年7月号がそれで、その目次に、
「三色版 
一、『母よ恋し』八雲恵美子、高尾光子……(松竹蒲田映画)」
とありながら、そのページが欠落している。切り抜き集に貼付されている色刷りグラビア記事は、サイズや紙質、他の号のページ構成などからみて、この雑誌から切り抜かれたものとみて、ほぼ間違いない。

「芝居とキネマ」は、その誌名でわかるように、芝居と映画の話題作、注目作を、スチール写真などをふんだんに使って紹介するグラビア雑誌である。まだカラー写真などない時代である。モノクロ写真に人工的に着色する「人着」は、手間も金もかかる。話題作や製作会社が力を入れた作品だけが、この特別な扱いを受けることができ、雑誌の巻頭や特別のコーナーに紹介されるものに採用された。前月号では、大正15年の「キネマ旬報」ベスト・テンの第2位に選ばれた日活の大作「日輪」から、主演岡田嘉子のグラビアが一頁を使って掲載(写真参考)されている。

7月号といえば、「母よ恋し」公開の5月23日から、ひと月ほど経過して発行されたことになる。「母よ恋し」は、公開した結果、かなり評判がよかったのではないだろうか。こうして「母よ恋し」は、「日輪」と同様に注目作として取り上げられたと思われる。

「日輪」グラビア

2014/11/24
no.183

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