暴風雨の薔薇

1931年 映画脚本・原作

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原作:吉屋信子
脚本:野田高梧・水島あやめ
監督:野村芳亭
撮影:長井信一・小田浜太郎
製作:松竹蒲田撮影所

【配役】
伊吹澪子 八雲恵美子
その兄 奈良真養
兄の妻 富士龍子
高島賢二 山内光
実木不二子 若水絹子
その母 葛城 文子
その弟 突貫小僧
伴守彦 結城一朗
息子晃一 高峰秀子
帯広の伯母 鈴木歌子
小作女おきち 飯田蝶子
その倅市太郎 美濃勝彦
中田儀平 河村黎吉
校長 藤野秀夫

ジャンル:文芸もの、サイレント、12巻
封切日:昭和6年6月19日
封切館:浅草帝国館

【あらすじ】
澪子と不二子は同じ女学校を卒業した親友だった。不二子は間もなく伴守彦に嫁ぎ北海道へ行くが、澪子はさらに女子高師に学び、三年の後栃木県の某女学校の国語教師となって赴任する。澪子はここで新任の美術の教師高島賢二と出会い、やがて結婚することになる。そして東京に引越し澪子は市内の某私立学校に奉職し、健二は雑誌の挿絵等を描いていたが、その給料で友人と飲み歩き、彼女は心を痛める日が多かった。
翌年の夏、賢二が房州に製作旅行に出発する時、澪子は妊娠したことを打ち明けるが、賢二は不愉快な色を見せる。そして、賢二が留守中に見知らぬ老人が訪ねてきて、自分の娘が賢二の子を産んだという。澪子は夫の過去や性格がはっきりと分かったような気がする。澪子は生まれた子を兄夫婦に預けて働いていたが、兄夫婦の愛情の甲斐もなく子供は病気にかかって死んでしまう。
その後賢二は守彦の援助により洋行することになる。そして澪子は不二子に招かれ、夏休みを北海道で過ごそうと旅立つ。快活な学生気分の妻不二子、聡明で世の苦労を知り過ぎた澪子、守彦の心はいつしか澪子に惹きつけられていく。夏休みが終わろうとする頃、守彦は託児所を設立するので澪子に教職を辞め、北海道に留まるよう勧める。彼女はその厚意に感謝する。いよいよ託児所が開所する前日、自制心を失った守彦は、遂に澪子に本心を語ってしまう。夫ある身に守彦の言葉―澪子はその夜直ちに暴風雨を衝いて、東京へ帰るべく駅に向かう。不二子が後を追い、悔悟の守彦もまた追う。親しき友は果たして会うことができるだろうか…。

【解説】
原作は「主婦の友」に連載された吉屋信子の人気小説で、12巻の大作。水島にとって、吉屋信子作品の脚本第二作。
教職にある一女性を主人公に、妻帯する若き農園主の恋愛を描き、舞台を東京、栃木、北海道と広く展開。それを名脚本家野田高梧と女流脚本家水島あやめが脚本を担当。吉屋は「原作者の立場から云うと大変結構だったと思います、それに原作に非常に忠実だったのでほんとに気持がようございました」(「キネマ旬報」)という感想を残している。そして同誌は「監督野村芳亭の老巧さは観客を美しい友情の涙で曇らすに相違ない」といい、野田もその出来栄えに満足していると雑誌に書いている。
(20201007)

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